ひかげでダンス

物書きをお仕事にしたい人。練習中。

ショートショート小説#2:メールの時代

鍵付きメールのフォルダを開く。十数通、消したくないメールが入っている。いちばん最近は4日前、いちばん古いのは1年弱くらい前。どれもタイトルには「Re:」の文字がアホみたいに連打されている。それだけで、ちょっとニヤニヤしてしまう。積み重ねた時間の証し。同じ時間を過ごしていたような錯覚。川上くんも、ケータイを握りしめて、返事が来なかったらどうしよう、変なこと書いたかな、ちゃんと意味がつたわったかなと、モンモンとしていてくれたら嬉しい。今の私と同じように。

最近嵐の新曲に変えた着メロが流れ出す。しっかり最後まで聞いてから、メールの受信フォルダを開ける。新着は川上くんからのメール。きた。返事きた。嬉しくてニヤニヤしてしまう。早くメールを開けたい気持ちと、この喜びをもうちょっと味わっていたい気持ちがプロレスみたいな激しい喧嘩を始める。けれど味わいたい気持ちはいつも弱く、すぐに負けてしまう。どんな返事が来ているのかめちゃくちゃに気になるのだ。我慢する余裕なんてない。
メールを開封すると、二、三行の短い文章と「また明日な」の文字。心がふわふわに浮いて、家の屋根なんかするっと通り過ぎて、綺麗な細い三日月をハンモックにして眠れそうなくらい嬉しかった。左胸がキューっとする。
誰が送って来てもこの機械の文字だけど、川上くんの「また明日な」はなんだか特別に思える。
「また明日な」
明日会って話ができるんだ。そういう当たり前のことが、とんでもなく、嬉しい。


所要時間:わかんない
出来:もうちょっと照れたかった